唯一のトトロ

2005年4月13日 家族
結婚記念日ぐらい主人のことを考えよう
今日、薔薇を抱えて帰ってきた人のことを

知り合ったのは12年前の今日
当時一人暮らししていたマンションで
真夜中に突然非常ベルが鳴った

な、なにごとっ??

慌てて部屋着のまま外に飛び出してみると
たまに見かける涼しげな顔立ちの隣人に話しかけられた

「何かあったんですかね?」

…これがふたりのはじまり

まぁ落ち着くまでコーヒーでも飲みますか
というわけで、まだ肌寒いエレベーターホールで
缶コーヒーをすすりながら冷えた手を温めつつ
何や会社近所やんとか同じ歳やねんやとか
鳴り止んだ非常ベルに気付かないほど話し込んでいた

そこからは急展開
元々が隣人なのだから、互いの行き来も面倒やなと
翌週には私の部屋が物置&PC部屋、主人の部屋がLD+寝室
そんな奇妙な同棲生活が春とともに始まった

憧れとか好きとかで始まった関係ではなかったからか
肩肘張らずに過ごせたのが心地よかった
そもそもの出会いもすっぴん&部屋着だったし
デートの後、相手と別れる名残惜しさも
次に会えるまでの九十九折るもどかしさもなかったが
へー…この人ってこんな人なんや
という新たな発見の日々が楽しかった
喧嘩もせず、感情をぶつけ合う事もなく
まるでそこはトトロのお腹の上のような心地良さ

当時、仲の良かった友人は、主人のことを
「となりのトトロ」と呼んでいたのは身内では有名な話
彼の名誉のためにも一応一言添えておくが
外見はトトロちっくではないのであしからず

正直、ときめきはなかったが、平穏で静かな毎日
幸せだと思っていたし、何ら不満もなかった
それが「退屈」という言葉に置き換わったのは
いつの頃からだったのだろう?

主人も結婚してから2度ほど浮気をしたことがある
(私が知っている限り)
たぶんもてる類の人だから、それは仕方ない
知ったからといって、驚いたことに嫉妬しなかった
私とはセックスレスやのに他ではしてるんや…と
体が女性に対して正常に反応できてよかったわと安心すらした

ある日相手の女性が鼻息荒く家を訪ねてきて
「ご主人は私とつきあっているんですっ!!」
と宣言されるという、昼ドラばりのシーンもあったけど
あぁ、そうなの?そんなに主人がいいならどうぞ
と、微笑みながら答え、それを奥様の余裕と勘違いされ
別れを告げられたこともあったようだ

でも余裕ちゃうしね、本気でそう思ったんだから

となりのトトロは結婚して9年たった今でもトトロだし
やはり約束どおり薔薇の花束を抱えて帰ってきたし
ずっとずっとこの穏やかさは続くのだろう
それはイコール気が遠くなるほどの退屈さともいえる
愛してるとかずっと一緒にいたいとか
そんな始まりの結婚生活ではないにしろ
私にとって心がみだりにざわめくことのない唯一の男性

何にせよ、
自分にとって唯一と思える人に巡り合うことは
愛せる人を探すよりも難しいことかもしれない

9回目

2005年4月12日 家族
彼は若いし結婚なんてまだ早いわ

そう思ってみたが
私が彼の歳には、もうお腹に娘がいたんだ

その頃の私は何を考えていた?
今となっては思い出せないぐらいの過去
何より、幸せだったのかすら記憶にない
ただひたすら帰りの遅い主人を待ち侘び
まだ見ぬ子への愛情でバランスをとっていた

もしや流されていたのは
その頃の私の方だったのかもしれない
結婚・妊娠という幸せの絶頂と呼ばれる時期を
思い出したくても思い出せない

そんな空白の時間を抱えながら
明日、9回目の結婚記念日を迎える

主人は薔薇の花束を買ってくるだろう
結婚記念日には薔薇を抱えて帰ってきて
何気なく私が言った一言は
例外なく毎年律儀に守られている

むせかえるほどの甘い香りに包まれて
私はその時、何を想うのだろう
娘とお弁当を持ってお花見に出かけた
午後から雨との天気予報がうれしくもはずれ
少し暑すぎるぐらいの日曜の公園
空を見上げると桜吹雪に目がくらみそうだった

親子連れや老夫婦、膝枕でお昼寝のカップル
それぞれがそれぞれにさくらを見て想うことだろう
もちろんそれは私にもあてはまることで
不思議と過去の幸せだった記憶ではなく
さくらから連想する悲しかった出来事を思い出していた

「さくらの下でプロポーズってすてきよね」

ファーストキスもまだ(であろうはず)の娘が
うっとりとそうつぶやいた

願わくばこの娘にとってのさくらは
うれしかったり幸せだったり楽しかったり
そんな象徴であり続けますよう

心からそう祈った

部屋のあかり

2005年4月2日 家族
「主人在宅ストレス症候群」
聞きなれない言葉だが
そういうものがあるらしい
何でも「症候群」ってあるもんだ

夫が家に帰りたがらないのを
「帰宅拒否症候群」
というそうだが上記はその逆

夫が家にいることが
妻の大きなストレスとなり
心身に異常が出るのだそう

家が好きなんだと豪語する夫

会社帰りに同僚と一杯なんてこともなく
(そもそもそれが信じられない…)
出張へ行っても最終に間に合わせて必ず日帰り
休みの日には一日パジャマで過ごすことも

さて、今日は同僚とスペイン料理を食べてきた私
久しぶりに愚痴りながらのお酒も入っていい気分
歩きながらふと思いついて家の方向へ目を向けると
部屋に明かりが点いているのが見えた

はぁ…帰ってる

そう思った瞬間一気に酔いが醒めて
そのまま通り道の近所の公園で
煙草を吸って時間を潰すことにした

通称「恐竜公園」
恐竜の遊具があるので子供たちはそう呼んでいる
正式名称は私もいまだに知らないでいるその小さな公園では
ホームレスのおじさんが2人ほどアルミ缶を探して
人目も気にせず雑多なゴミ箱をあさっている

この人達も色んな事情でそうしているのだろうが
家に帰りたくなくてホームレスになった人もいるんだろうなぁ
なんて考えてるうちに危うく仲間入りしそうになった

私はどうだろう?
家が嫌いなのか、それとも主人が嫌いなのか

ふと気がつくと、もう終電の時間
さすがにこれを逃すと面倒くさいことになりそうなので
重い腰を上げて家に戻ることにした
気がつけば2時間ほど公園にいたことになる
遅くなった理由を聞かれた時にはこう答えよう
色んなパターンでシュミレーションしながら

夫はもう寝ていた
ほっとしたような腹が立つような
もやもやとした気分だけが残った
後味の悪い、まだ肌寒い夜のこと

36年

2004年11月18日 家族
母が倒れた
入院して手術が必要とのことで
久しぶりに実家へ帰った

今の時代で言うと
シングルマザー

私らの時代では
未婚の母

そういう生き方を選んだ人

慌てて病院へ駆けつけた私に

「(手術)同意書を書いたら早く家へ帰りなさい」

開口一番そう言った
ふん

強がりなところは昔から変わらない
その血は濃く確実に私へと受け継がれている
悲しいかなそれは
どうしようもなく否定しようのない事実

倒れたりするからでしょ?頼むわもう…

他人様が聞いたら
何と労わりのない会話なのだろうが
これが精一杯のコミュニケーション

こうして憎まれ口を叩けるだけでも…と
まずはほっとした
そして大事にしてあげなくちゃと
たぶん生まれて初めて素直に思えた

決して立派な母ではないが
今さらながら母の生き方を
誇りに思えるようになったからなのだろう

そうあっさり認めた自分が照れくさかった
36年かかったけどね

ふたりめ

2004年11月9日 家族
むかしむかしのその昔
BOOWYの曲を聴いてた私に向かって

「へー西城秀樹が好きなん?」

と声をかけ
私を瞬間冷凍させた高校時代の友達に
ふたりめの子供が生まれた

ひとりめは女の子
ふたりめは男の子

産院へお祝いに行って
久しぶりのほんのり甘い乳臭さにうっとり
そうそうこれって赤ちゃんの匂い
病院で「おめでとう」と言うのも産院ぐらいだね
あぁもう、ほえほえ泣いちゃって3,800gだって

かわいい

抱かせてもらった途端に母性本能スイッチオン
他者は全て外敵に見えるのだから不思議
私こそ他人なことも忘れて…

ふたりめ欲しい

とてつもなく恐ろしい事を考えてしまった
ホルモンの成せる技なのか
幸せオーラのお裾分けに酔っているのか
とにかくやばい

*****************************************

誰に聞いたかは覚えていないが
娘が生まれて間もない頃

男の子はエクスタシーの子

という話を聞いたのを思い出した
信憑性なんてまるでなくて
美容院で読んだ女性週刊誌あたりからのネタか?

確か、女性がイクと膣内がアルカリ性になり
酸性に弱いXY遺伝子を持つ精子でも(男の子の方ね)
子宮内に到達して…なんちゃらかんちゃら

だから健全な(?)夫婦生活を送っていたら
奥さんも身体が開発されてきてイキやすくなり
男の子ができやすい体質になるなどと
まことしやかに話は締めくくられたが
何だかそれを聞いてるうちに無性に腹が立って

あーすいませんねぇ、うちは女の子で!

って気持ちになったのは
若気の至りだったのか
それともまだ主人を愛していたからからなのか

*****************************************

そしたらふたりめはまた女の子?
なんて考えてる自分を戒めながら
何で主人の子供を想定しているんだろう

ふたりめほしい病
いつまで続くのか

こんな気持ちのまま彼氏に会いたくなかったけど
結局会って、たぶん気付かれないまま
まったりといつものように過ごした

彼氏がサトラレじゃなくてよかった

独りよがり

2004年11月2日 家族
娘がマンションのエレベーターでぽつり

「パパって優しいねんでー」

なんで?

「エレベーター降りるときに、
 1階で待ってる人がいたらあかんから
 降りる時に1階を押して降りるねん」

じゃぁ上の階で降りるのを待ってる人はどうするの?
1階で待ってる人のことしか考えていないの?

独りよがりの優しさ

それに気付いたのは
つい最近のことなのだけど

恋している時には
それが彼の優しさだと思っていた

ずっと気付かなければよかった
結婚して
最初に欲しかったものが
ダイニングテーブル

独身の頃
一人暮らしを始めて
確かに
自由な時間は増えたけど
たぶん寂しかった

料理が好きなわけではない
インテリアに興味があるわけでもない

私の実家では
そこが家族の団欒の場だったから

学校から帰ってきて
その日にあった出来事を話したり
宿題をしたり
うたた寝をしたり

あたたかいところだったんだと思う


ダイニングテーブルで
宿題をしている娘を見て
ふと
そんなことを思い出した

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